嫌なら辞めたらいいのに…辞められない理由を精神分析的に考えてみた

picture

嫌なら辞めたらいいのに…辞められない理由を精神分析的に考えてみた

「嫌なら辞めたらいいのに…」そう思っていても、実際には辞められない人が多くいます。なぜ、嫌な仕事を続けてしまうのでしょうか? 今回は、精神分析的な視点から、その理由を深掘りしていきます。

精神分析の3つの視点から考える「辞められない理由」

フロイト精神分析では、人間の心は「超自我」「自我」「エス(イド)」の3つの要素で構成されていると考えられています。今回は、この3つの視点から「嫌なのに辞められない」理由を分析してみましょう。

1. 超自我:厳しすぎる「べき」思考があなたを縛る

超自我とは、社会のルールや道徳、親の教えなどを内面化した、いわば「心の監視役」です。超自我が強すぎると、「~すべき」「~しなければならない」という思考に縛られ、自分の本当の気持ちよりも、ルールや義務を優先してしまいます。

例えば、

  • 厳しいしつけを受けて育ち、「我慢することが美徳」と教え込まれてきた人
  • 親からの自立に失敗し、過度にルールに依存してしまう人
  • パワハラ上司の指示に従わざるを得ない状況にいる人

などは、超自我の影響が強く、嫌な仕事でも「我慢すべき」「辞めるのは無責任だ」と考えてしまい、辞められない状況に陥りやすいと言えるでしょう。

特に、パワハラ上司の問題は深刻です。パワハラ上司は、残念ながら一定数存在し、新入社員など経験の浅い人が最初の配属先で遭遇してしまう可能性も少なくありません。このような状況では、自分のせいだと自分を責めてしまったり、周りの理解が得られなかったりすることもあり、精神的に追い詰められてしまうケースも少なくありません。

また、社会的なルールや建前も、超自我に影響を与えます。例えば、障害者に対する理解不足や偏見は、障害を持つ人が働きにくい環境を作り出す一因となっています。

2. エス(イド):生理的な不快感を感じにくい?

エス(イド)は、本能的な欲求や衝動を司る心の部分です。本来であれば、嫌な仕事や辛い状況に対しては、生理的な不快感を感じ、それを避けるように行動するはずです。しかし、過去のトラウマや経験によって、この不快感を感じにくくなっている場合があります。

例えば、

  • 虐待などのトラウマによって、本来感じるべき不快感に鈍感になってしまっている人
  • 過酷な労働環境に慣れてしまい、疲労やストレスを感じにくくなっている人

などは、エス(イド)からのサインを感じ取れず、限界を超えて働き続けてしまう可能性があります。

また、仕事内容によっては、生理的な不快感を伴う場合もあります。特に、性的なサービスを提供する仕事に従事する女性は、自身の尊厳や身体的な安全を脅かされるリスクと隣り合わせです。しかし、経済的な理由や、他に選択肢がないと感じている場合、嫌な思いをしながらも仕事を続けることを選択してしまうケースも少なくありません。

3. 自我:情報不足や無知が選択肢を狭める

自我は、現実世界と向き合い、理性的に判断する役割を担います。しかし、情報不足や無知によって、適切な判断を下せなくなることがあります。

例えば、

  • 女性の権利や労働に関する知識が不足しているため、不当な待遇に気づかず、我慢してしまう人
  • 社会情勢や経済の仕組みを理解していないため、より良い選択肢があることに気づかない人

などは、自我が十分に機能せず、不利益な状況に置かれていても、それを改善するための行動を起こせない可能性があります。

現代社会は、Society 5.0、ジョブ型雇用、SDGs、シェアリングエコノミーなど、新しい概念や変化が次々と生まれています。これらの情報を知っているかどうかは、自身のキャリアや働き方を考える上で非常に重要です。情報不足は、選択肢を狭め、不本意な状況に甘んじてしまう原因となる可能性があります。

まとめ:嫌な仕事を辞められない理由は複雑

「嫌なら辞めたらいいのに」という言葉は、一見シンプルですが、その裏には、複雑な心理的カニズムが隠されています。超自我エス(イド)、自我、それぞれの視点から分析することで、なぜ自分が辞められないのか、その原因が見えてくるかもしれません。

今回の記事では、一般的な例を挙げながら解説しましたが、個々の状況によって、辞められない理由は異なります。もし、あなたが今、嫌な仕事を続けているのであれば、この記事を参考に、自身の状況を振り返り、本当に自分にとって必要な選択は何かを考えてみてください。

そして、もし一人で悩んでいるのであれば、信頼できる人に相談したり、専門家の助けを求めることも検討してみてください。自分らしい働き方を見つけるために、まずは一歩踏み出してみることが大切です。