双極性障害を徹底解説!専門医による症状・原因・治療法

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双極性障害

双極性障害は、人口の約1%が罹患する精神疾患で、躁うつ病とも呼ばれます。10代から20代での発症が多く、家族歴がある場合も多いです。躁状態では、気分の高揚、活動性の増加、衝動的な行動がみられ、うつ状態では、気分の落ち込み、意欲の低下、思考力の低下がみられます。治療には薬物療法とカウンセリングが用いられ、再発予防のためには継続的な治療が重要です。合併症として、不安障害や境界性パーソナリティ障害などを発症することもあります。

定義・概要

双極性障害は脳内の化学物質バランスの乱れによって引き起こされる精神疾患です。躁状態鬱状態を繰り返し発症するのが特徴で、どちらの状態も通常の数週間から数カ月続きます。躁状態では、過剰なエネルギー、衝動性、多幸感が特徴です。対照的に、鬱状態では、悲しみ、絶望感、無気力感が特徴です。双極性障害の原因は完全には解明されていませんが、遺伝的要因、環境的要因、脳の構造や機能の異常などが関与していると考えられています。治療は、薬物療法心理療法、ライフスタイルの変更を組み合わせたアプローチで行われます。適切な治療を受ければ、双極性障害の症状を管理し、充実した生活を送ることができます。

症状

双極性障害 症状

双極性障害の症状には、高揚感や多幸感、考えがまとまらない、睡眠時間の減少、衝動的な行動などが現れる躁状態と、落ち込みや絶望感、集中力の低下、食欲や睡眠の変化などのうつ状態が交互に現れます。躁状態が1週間以上続く場合、または軽度の躁状態が4日間以上続く場合は、双極性障害の診断基準を満たします。

躁状態

躁状態

躁状態とは、極端に元気な状態のことです。エネルギーにあふれ、多幸感や幸福感に包まれます。意欲的で饒舌になり、思考が早くなります。睡眠欲が減少し、夜通し活動したり、リスクを冒したりする傾向があります。躁状態が1週間以上続くと、双極性障害の診断基準を満たします。

うつ状態

うつ状態

うつ状態は、双極性障害のもう一つの症状です。躁状態とは対照的に、うつ状態では気分が落ち込み、エネルギーが低下します。やる気や関心が失せ、集中力や決断力に困難が生じることもあります。睡眠障害、食欲不振または過食、自殺願望などが現れることもあります。うつ状態は数日から数週間続き、重篤な場合は日常生活に支障をきたす可能性があります。うつ病の症状に気づいたら、精神保健の専門家に相談することが重要です。適切な治療を受けることで、症状を管理し、生活の質を向上させることができます。

タイプ

双極性障害躁状態は、1週間以上続く極度の元気さや多幸感が特徴です。エネルギーがみなぎり、寝なくても活動でき、気持ちが浮ついているような状態です。朝になっても歌い続ける人がいるほど、異常な高揚感が続きます。そんな躁状態が4日以上続くと、双極性障害2型に分類されます。一方、落ち込んでいる期間も2週間以上と長く、気分の波が極端に変動するのがこの病気の特徴です。

双極性障害I型

躁病

双極性障害I型

双極性障害にはI型とII型があり、I型は躁病エピソードを経験します。躁病エピソードとは、少なくとも1週間続く、非常に亢進した気分、または過度の興奮と活発性の時期です。この期間中、患者さんは多弁になり、衝動的な行動を取り、睡眠の必要性が減少します。また、妄想や幻覚を伴うこともあります。

躁病エピソードは危険な状態になることがあり、自殺や暴力行為のリスクが高まります。したがって、躁病エピソードの兆候が現れたら、すぐに治療を受けることが重要です。

双極性障害II型

双極性障害II型は、双極性障害の軽度のタイプの1つです。双極性障害II型では、軽度の躁状態(ハイポマニア)と深刻なうつ病のエピソードを繰り返します。ハイポマニアは、1週間以上続く気分の高揚やイライラ、活動性の増加、過剰な自信などの症状を特徴とします。うつ病のエピソードは、2週間以上続く悲しみ、興味の喪失、疲労、食欲の変化などの症状を特徴とします。双極性障害II型は、双極性障害I型よりも一般的で、人口の約1%に影響を与えます。

原因

双極性障害の原因は、まだ完全には解明されていません。遺伝的要因が強く関係していると考えられていますが、特定の遺伝子が特定されたわけではありません。双極性障害の家族歴のある人は、発症リスクが高くなります。また、双極性障害統合失調症発達障害などの他の精神疾患の家族歴がある場合にもなりやすい傾向があります。

遺伝的要因

双極性障害の遺伝

双極性障害は、家族歴が強く遺伝的な要因が関与することがわかっています。しかし、特定の原因遺伝子はまだ解明されておらず、発症の仕組みは複雑です。研究では、親族に双極性障害がある場合、発症リスクが高まることが示されています。さらに、統合失調症発達障害双極性障害と関連する遺伝的要因を共有している可能性があると考えられています。精神疾患の発症メカニズムを特定するのは困難であり、複合的な要因が絡んでいる可能性があります。

環境要因

双極性障害の原因としては、遺伝的な要因があげられますが、環境要因もまた重要な役割を果たしていると考えられています。環境要因には、幼少期のトラウマや虐待、ストレスfulなライフイベントなどが含まれます。これらの要因は、脳の化学物質のバランスを崩し、双極性障害の発症に寄与すると考えられています。双極性障害は遺伝的な要因と環境要因の相互作用によって引き起こされる病気であり、一因のみで発症するものではありません。

治療

双極性障害の治療では、薬物療法が中心になります。躁状態鬱状態の両方をコントロールする気分安定薬が主に使用されます。また、精神療法も重要な役割を果たし、認知行動療法(CBT)や対人関係療法(IPT)などが行われます。双極性障害は一生涯続く病気ですが、適切な治療により症状をコントロールし、社会生活や対人関係を維持することができます。治療を中断したり、薬を勝手に減らしたりすると再発のリスクが高くなるため、医師の指示に従って継続的な治療を受けることが大切です。

薬物療法

薬

薬物療法双極性障害の治療において重要な役割を果たします。気分安定薬抗精神病薬抗うつ薬など、さまざまな種類の薬が処方される可能性があります。リチウム、バルプロ酸、ラモトリギンなどの気分安定薬は、気分の変動を制御し、躁うつサイクルの予防に役立ちます。抗精神病薬躁状態統合失調症様症状の管理に使用されます。また、抗うつ薬うつ状態の治療に使用されます。薬物療法双極性障害の再発を予防するためにも不可欠です。継続的な治療により、症状をコントロールし、安定した生活を送ることが可能になります。

抗精神病薬

抗精神病薬

抗精神病薬は、双極性障害の治療に不可欠です。中でも、クエチアピンとルラシドンがよく用いられています。これらは、躁状態の症状を軽減し、再発を予防するのに効果を発揮します。ただし、糖尿病や眠気などの副作用が出る可能性があるため、医師の指導に従って慎重に服用することが大切です。

気分安定薬

気分安定薬

気分安定薬は、双極性障害の治療に不可欠な薬物です。リチウム、バルプロ酸、ラモトリギンなどが使用されます。これらの薬物は、気分の変動を安定させ、躁状態鬱状態の発症を防ぐのに役立ちます。ただし、気分安定薬には眠気、体重増加、皮膚疹などの副作用が出る可能性があるため、医師の指示に従って注意深く服用することが重要です。

カウンセリング

双極性障害においてカウンセリングは、病気への理解を深め、適切に対処するための重要な役割を果たします。医師やセラピストは、気分の波に対する認識を高め、トリガーを特定し、健康的な対処メカニズムを開発するのに役立ちます。また、再発予防や薬物治療の順守をサポートするために、家族や大切な人を巻き込むこともできます。カウンセリングは、双極性障害による影響を軽減し、生活の質を向上させるために不可欠な治療の柱です。

合併症

合併症

双極性障害は、再発を繰り返すことで、長期的にさまざまな合併症を引き起こす可能性があります。躁状態が長く続くと、衝動的な行動、判断力の低下、人間関係の破綻、経済的な問題などを引き起こす可能性があります。一方、うつ状態が長引くと、仕事や学業の成績低下、社会的孤立、自殺願望につながる可能性があります。また、双極性障害は心血管疾患、脳血管障害、糖尿病などの身体的合併症のリスクも高めます。

不安障害

双極性障害躁状態鬱状態を繰り返すという特徴があります。躁状態とは、極度に元気で、エネルギーに満ち溢れ、多幸感に浸り、快活に感じ、衝動的に行動する状態のことです。この状態は通常、1週間以上継続します。また、躁状態が4日間以上続く場合は、双極性障害II型と診断されます。

自殺リスク

自殺予防

自殺リスク

双極性障害は、自殺率が非常に高いという特徴があります。10%以上が自殺に至るというデータもあり、再発率も高いため、注意が必要です。躁状態では、衝動性が亢進するため、自傷行為や自殺企図のリスクが高まります。家族や周囲の人たちは、患者さんの行動に変化がないか、兆候を見逃さないことが大切です。また、患者さん自身も、気分の変化に気づいたら、主治医に相談し、適切な治療を受けましょう。

家族への影響

家族

双極性障害は、家族関係にも大きな影響を及ぼす精神疾患です。躁状態の際には、本人を介護する家族に負担がかかったり、家庭内暴力が発生したりすることもあります。また、双極性障害の家族を持つ子供は、ヤングケアラーを担うことになったり、複雑な生い立ちを送ることで、精神疾患を発症するリスクが高まるとされています。そのため、双極性障害の家族へのサポートは非常に重要で、病気に対する理解を深めたり、医療機関や支援団体への相談を利用したりすることが大切です。