【人生の目標設定】臨床現場から考える「本当にやりたいこと」の見つけ方

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【人生の目標設定】臨床現場から考える「本当にやりたいこと」の見つけ方

「将来のビジョンが見えない」「本当にやりたいことがわからない」

あなたは今、そんな悩みを抱えていませんか?

日々の業務に追われ、目の前のタスクをこなすことに精一杯で、立ち止まって将来を考える余裕がないという方もいるかもしれません。

臨床現場で働く中で、患者さんからこのような悩みを打ち明けられることが多くあります。

「仕事は効率的にこなせるけど、この会社で何を成し遂げたいのかわからない」 「毎日をただなんとなく過ごしているだけで、自分の人生このままでいいのか不安になる」

このような悩みは、決して他人事ではありません。私自身も、常に自問自答し、葛藤しながら日々を過ごしています。

今回は、臨床心理士として働く中で得られた経験や知識を交えながら、「目標設定」について考えていきたいと思います。

目標設定の重要性:人生の質を高めるために

私たちは、ただ生きているだけでは、なかなか「人生の質」を高めることはできません。

もちろん、睡眠や食事など、生きていくために必要な欲求を満たすことは重要です。しかし、それだけでは、本当の意味で人生を充実させることは難しいでしょう。

人生の質を高めるためには、「自分は何のために生きているのか」「どのような人生を送りたいのか」という問いに対する、自分なりの答えを見つける必要があります。

そして、その答えを見つけるための有効な手段の一つが、目標設定なのです。

目標設定は、単に「〜したいことリスト」を作るような、簡単な作業ではありません。

自分自身と深く向き合い、自分の価値観や強み、弱みなどを理解した上で、「自分にとって本当に大切なものは何か」を明確にする作業が必要となります。

目標設定を難しくしている要因:現代社会の構造と心のメカニズム

目標設定が重要だと分かっていても、なかなか行動に移せない、あるいは、そもそも何を目標にすればいいのかわからないという方も多いのではないでしょうか?

目標設定を難しくしている要因として、現代社会の構造や、私たちの心のメカニズムが複雑に絡み合っていることが考えられます。

大きな物語の喪失と小さな物語の台頭

かつての社会には、「良い学校を出て、良い会社に就職し、結婚して家庭を持つ」といった、ある種の「大きな物語」が存在していました。

しかし、現代社会において、このような「大きな物語」は崩壊し、個々人がそれぞれの価値観に基づいて自由に生き方を選択できる「小さな物語」の時代へと移り変わってきました。

これは一見すると、多様な生き方が認められる素晴らしい社会になったように思えます。

しかし、裏を返せば、「自分の人生は自分で切り開いていかなければならない」という、大きな不安やプレッシャーにさらされることにも繋がります。

マズローの欲求5段階説と目標設定の壁

人間の欲求を5段階に分類した「マズローの欲求5段階説」をご存知でしょうか?

  1. 生理的欲求: 食べたい、眠りたいなど、生命維持に関わる根源的な欲求
  2. 安全欲求: 安心して暮らしたい、危険を回避したいなど、安全・安心を求める欲求
  3. 社会的欲求: 誰かと繋がりたい、集団に属したいなど、愛情や所属を求める欲求
  4. 承認欲求: 認められたい、尊敬されたいなど、自己肯定感や評価を求める欲求
  5. 自己実現欲求: 自分の可能性を最大限に発揮したい、創造的な活動をしたいなど、成長や自己実現を求める欲求

マズローは、これらの欲求が段階的に現れると説明しています。

つまり、下位の欲求が満たされない限り、上位の欲求は現れにくく、目標設定においても、この段階が大きく影響してきます。

例えば、「お金がないため、毎日生活するだけで精一杯」という状態では、「世界一周旅行に行きたい」という目標を立てることは難しいでしょう。

しかし、現代社会では、物質的に豊かになり、安全や社会的欲求が満たされているにも関わらず、「自分は何のために生きているのか」「本当にやりたいことは何か」という、より高次元の目標を見失ってしまっている人が少なくありません。

幼少期の親子関係や過去の経験がもたらす影響

目標設定を阻む要因は、社会構造だけではありません。

幼少期の親子関係や過去の経験から、無意識のうちに「どうせ自分には無理だ」「挑戦して失敗するのが怖い」といった、ネガティブな自己イメージを抱いてしまっているケースも少なくありません。

このような心の傷やトラウマは、「目標設定の壁」となり、私たちが本来持っている可能性を閉ざしてしまう可能性があります。

具体的な目標設定の方法:意義目標、成果目標、行動目標

では、具体的にどのように目標設定をすれば良いのでしょうか?

ここでは、「意義目標」「成果目標」「行動目標」という3つの段階に分けて考えていきましょう。

  1. 意義目標: 「なぜ、それをやりたいのか?」「社会に対してどのような影響を与えたいのか?」といった、根本的な目的や価値観を明確にする
  2. 成果目標: 意義目標を達成するために、「どのような成果を出せば良いのか?」「どのような状態を目指せば良いのか?」といった、具体的な目標を設定する
  3. 行動目標: 成果目標を達成するために、「今日から何をすれば良いのか?」「1週間後までに何をすれば良いのか?」といった、具体的な行動計画を立てる

例えば、「チーム医療の質を向上させたい」という漠然とした想いを持っているとします。

これを3つの段階に分解すると、以下のようになります。

  • 意義目標: 日本の医療現場におけるチーム医療の質を向上させることで、患者さん一人ひとりに寄り添った、より良い医療を提供したい。
  • 成果目標: チーム医療に関する書籍を出版し、10万部売り上げる。
  • 行動目標: 毎日30分、書籍の執筆時間にあてる。書店に営業に行く。

このように、大きな目標を段階的に分解していくことで、より具体的で行動に移しやすい目標設定が可能になります。

目標達成を阻む心の壁を乗り越える:自己理解と受容

目標設定ができたら、あとは行動あるのみ…と言いたいところですが、実際には、様々な困難や壁にぶつかることもあるでしょう。

特に、過去の失敗体験やトラウマ、周囲との人間関係などから、「どうせ自分には無理だ」「挑戦するのが怖い」といったネガティブな感情に囚われてしまうこともあるかもしれません。

このような心の壁を乗り越えるためには、「自己理解」と「受容」が重要になります。

自己理解:自分の強みや弱み、価値観を知る

まずは、自分自身と向き合い、自分の強みや弱み、価値観などを理解することから始めましょう。

  • あなたはどんな時に喜びを感じる?
  • あなたはどんなことに興味がある?
  • あなたはどんなことに怒りを感じる?
  • あなたはどんなことを得意としている?
  • あなたはどんなことが苦手?

これらの問いに対する答えをノートに書き出したり、信頼できる人に話したりすることで、自分自身のことを客観的に見つめ直すことができます。

受容:ありのままの自分を認め、受け入れる

自己理解を深めたら、次は「ありのままの自分を認め、受け入れる」という作業に入ります。

完璧な人間はいません。誰でも、得意なこと、苦手なことがありますし、失敗してしまうことだってあります。

大切なのは、自分の弱みや欠点も含めて、ありのままの自分を認め、受け入れることです。

周囲との比較ではなく、「過去の自分」と比較する

目標達成を阻む要因の一つに、「他人との比較」があります。

SNSなどで、キラキラと輝いているように見える人たちと自分を比較してしまい、「どうせ自分には無理だ」と、モチベーションが下がってしまうこともあるかもしれません。

しかし、他人と比較しても、何も生まれません。

大切なのは、「過去の自分」と比較することです。

  • 昨日よりも今日、少しでも成長できたか?
  • 1週間前よりも、目標に近づけているか?
  • 1年前よりも、できることが増えているか?

このように、「過去の自分」と比較することで、着実に成長している実感を得ることができ、モチベーションの維持に繋がります。

まとめ:目標設定は、自分自身と向き合い、人生を創造する旅

今回は、「目標設定」について考えてきました。

目標設定は、決して簡単な作業ではありません。

しかし、自分自身と深く向き合い、試行錯誤を繰り返しながら、自分にとって本当に大切な目標を見つけることができれば、人生はより豊かで、意味のあるものになるはずです。

目標設定は、ゴールではなく、スタート地点に過ぎません。

この記事が、あなたの目標達成のヒントになれば幸いです。